御祭神のお話



武甕槌命たけみかづちのみこと 経津主命ふつねしのみこと

イザナギが十拳剣でカグツチの首を切り落として、血が石に滴った時に生まれました。
武道、力の神として知られております。

 国譲り神話によれば、失敗を重ねる葦原中国の平定に、アマテラスは業を煮やしていた。そこで、アメノトリフネにタケミカヅチとフツヌシを乗せ派遣することにした。出雲の稲佐の浜に降り立った彼は、十拳剣を波間に突き立て、その剣先に胡座をかいてオホクニヌシに国譲りを迫った。しかし、オホクニヌシはコトシロヌシにこの国の全権を任せていると答えた。タケミカヅチはアメノトリフネを使ってコトシロヌシを連れ戻し、国譲りを納得させた。しかし、それに納得しなかったのがタケミナカタである。睨み合いは、やがて戦いへと発展する。しかし力の差は歴然であった。タケミカヅチの手は、氷柱や剣先に変化し、タケミナカタを追い込んで行く。タケミナカタは逃げ出すが、執拗に追跡し、信濃国の諏訪湖まで追いつめ遂に服従させたのである。それをオホクニヌシに伝えると、「もはや何も問題はないでしょう。この国を差し上げます」と答えた。
 神武東征神話によれば、神武の軍隊が熊野に差し掛かった時、熊に化身した神に呪いをかけられてしまう。その頃、熊野には高倉下という人物がいた。彼の夢の中にタケミカヅチが現れ、自分の分身であるフツノミタマという剣を倉の中に置いておいたと伝えた。夢から覚めた高倉下が倉の中を見ると、確かに床に突き刺さったフツノミタマがあった。さっそくそれを神武に献上すると、全ての呪いが解け再び進軍を開始できたのである。
 「たけ」は「猛々しい」の意味。「御雷」とは、文字通り「かみなり」の事である。雷神であり、知を司る神であり、ひいては戦いの神である。「古事記伝」ではフツヌシと同一視している。